非結核性抗酸菌症(気管支拡張症)
どういう病気?
非結核性抗酸菌とは結核も含めた抗酸菌属(マイコバクテリウム属)の一つです。非結核性抗酸菌には多くの種類がありますが、わが国ではアビウム菌とイントラセルラーレ菌が多く70%を占め、MAC症(マック症)と呼ばれています。次いでカンサシ菌が20%ほどを占めますが、いずれも結核菌とは違って人には感染しません。しかし結核よりも薬が効きにくく、一度改善しても再発もしやすいため、厄介な病気の一つです。主には肺内に病巣を作り、咳、痰、発熱、喀血などの症状がでます。
わが国では近年増加しており、死亡統計を見ると1970年にはじめて3例が報告された後は次第に増加し、1990年には158例、2010年には1121例と急激に増加しています。この菌は自宅の土壌やシャワーヘッドに生息していることが多く、ガーデニングの土ぼこりやシャワーの蒸気を吸い込んで感染するといわれています。したがって知らないうちに感染していることが多く、初期では症状が出ないために検診で見つかることも少なくありません。痩せた中高年女性に多くみられますが、以前結核になったことがある人や、何らかの呼吸器疾患(気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患など)のある人にも起こり易いといわれています。
どんな検査をするの?
レントゲンやCT検査します。この病気は発病すると年余にわたって肺を障害し、気管支拡張や空洞をつくります。これらの所見で病気を疑った場合、喀痰検査をして菌が検出されると診断されますが、菌の量が少ない場合は培養して判明するまでに8週間程度要します。
どんな治療をするの?
カンサシは無治療では増悪することが多く、治療も有効なため全例治療します。治療薬は結核と同じ薬を12~18カ月服用します。
MAC症の場合、CT画像の所見で①結節気管支拡張型、②線維空洞型、③肺野結節型に分類されます。
②の線維空洞型のような場合には治療しますが完全な菌陰性化はできません。通常3種類の薬で治療をしますが、いろいろ副作用(視力障害、肝障害、発疹など)があり慎重な投与が必要です。治療期間は1~2年必要ですが、治療を中止できない場合も頻繁です。
②以外では、増悪を軽減する目的でエリスロマイシン少量長期療法は副作用が少なく有効です。エリスロマイシンは小児の感染症でよく使われるマクロライド系抗菌薬ですが、耐性菌を作りにくいこと、抗菌作用以外に抗炎症作用、免疫系への作用を期待してびまん性汎細気管支炎、気管支拡張症、慢性気管支炎などの患者さんに長期に投与します。1980年代から始められている治療方法で、私が医師になりたての頃にこの治療を気管支拡張症の患者さんに始めて、半年から1年でそれまで日常生活で酸素吸入が必要であったのが、酸素が必要なくなるまで改善した印象深い治療方法です。